職業選択の自由

職業を選択するまでの過程。

また会社辞めます

1年と半年ほど勤めた会社を退職することにした。経緯について振り返っていきたい。

入社の理由

退職の話の前に入社の経緯から振り返る。もともとこの会社には「遠隔診療ビジネスの立ち上げに携わる」という名目で入った、はずだった。入社時にはテクノロジーで日本の医療に関する課題(僻地医療、通院中断など)を解決していきたいというビジョンが社長から伝えられ、大いに共感したことを覚えている。

あと、前のSIer企業がそれはもう向いていない仕事だったので、一刻も早く転職したかったという事情もありよく考えずに転職を決めたのは間違っていない。入社前に勉強会などで転職先の社員の方と面識があったこともあり、(今思うと)異様にスムーズに入社が決まったことを覚えている。

退職の理由

事業とのシナジーを感じない

なんだかんだ言って一番大きい。もちろん入社の時には任された事業に希望を感じていたが、その後会社の方が変わっていった。いや、正確には会社が変わりつつある所で自分が入ったが、結局元に戻りつつある、と表現した方が正しい。

もともと就活関連事業から始まった会社なので、今でも主力事業は就活および就活関連のオウンドメディアである。しばらくしてエンジニアを採用し自社サービスを内製するようになり、「メディアの会社」から脱却しようと様々な構想が立ち上がり、そのうちのひとつである遠隔医療分野に自分がジョインした。しかし最近改めてメディアを強化する方針が明確になり、自分の担当業務も遠隔診療システムからいつの間にかメディアサイトの運用保守に変わっていた(コンテンツは医療がテーマではあるが)。発足当初はメディアサイトを広告塔として自社の遠隔診療サービスの集客経路のひとつにすると聞いていたが、今ではメディアサイト自体のセッション数やアフィリエイト収入が主なKPIになってしまっている。

遠隔医療事業が医療メディアサイトの運営に矮小化された一方、会社は「メディア強化」方針に従いメディアサイトが次々に立ち上がった。消費者金融、保険、婚活、他社から買収した恋愛コラムなどなど…一体この会社は何を目指しているのか? ていうか一時期のD●NAと同じ流れじゃないかコレ? 疑いすぎかもしれんが、自分ははっきりと「迷走」の流れを受け取った。

技術的な成長の限界

こういう会社の方針なのでせいぜいメディアサイトしか作れない。ご想像の通りシステムには大して複雑な処理はなく、仕事の依頼も多くは「バナーを設置してほしい」とか「テキストを変える」とかシンプルなものである。ちょっとRailsができる、くらいの技術力であれば問題なく務まる。1プロジェクトに関わる人数が異常に少ないのでレビュー体制はボロボロで、コードの品質も上がるはずがない。たまに他社事例を知るとレベルの低さに愕然とすることばかりである。

しかも上記の「メディア強化」方針のためSEO関連の施策が多い。個人的にはGoogleの手の平の上で踊らされている感覚でどうしても好きになれなかった。ていうか、もともと遠隔医療システムを展開していくつもりじゃなかったのか? 何で俺は検索順位とかセッション数ばっか気にしているのか?

なぜ、エンジニアリングの程度が低くても会社が存続していられるか。これは前出の就活関連事業が盤石の主力事業として会社を支えているからに他ならない。やはり弊社は「営業の会社」だった。エンジニアなんてただの便利屋である。創業の経緯はもちろん理解して入社したが、そこからの変革が進んでいなかったのを見抜けなかったのは自分の失点である。

裁量労働制を正しく運用していない

ぶっちゃけ然る所に報告すれば一発アウトな事案だと思っている。自分含めエンジニアは裁量労働制として勤務してはいるのだが、

  • 勤務時間の固定(遅刻の場合報告義務あり)
  • 残業代は固定
  • 22時以降の就業は事前申請が必要。なお、賃金の割増はない(※)
  • (ルールではないが) 業務における裁量は限定的、な感じがある

いや、こういう働き方が悪いと言っているのではない。ただ、こういう方針なら裁量労働制を名乗るなよと言いたい。正直、残業代を払いたいたくないから裁量労働制と言っているだけの典型的なブラック経営では? とまで疑っている。ちなみに自分は金が増えないのに残業するのはアホらしいので極力定時で帰っている。どうせ窓際部署で大した仕事でもないし。

(※) これは裁量労働制であってもアウトである。つまり、社内「裁量労働制」適用者で22時以降に勤務した労働者がいたとして、この「社内規定」を根拠として割増賃金が支払わなければ、裁判で訴えられれば負ける。この会社、労基法のプロはいないのか? ちなみに私はアホらしいので22時前には絶対に帰る(なるべく、ではない)。

転職活動を振り返る

実は去年の9月ごろに転職サイトに登録し、ゆるく活動していた。前回の転職活動と比べればかなりストレスなく活動できた。

  • 勤務地が都心なので仕事後の会社訪問が楽
  • 残業が少ないので時間調整しやすい (※)
  • Ruby on Rails の実務経験がある。これ重要

(※)自分だけは閑職なのでコレだったが、全社的には深夜残業泊まりこみ当たり前である。

今振り返ると結構な数の会社に訪問した。10〜15社くらいか? お祈りされたりしてまあまあストレスはあったが、いい結果になってよかった。

新しい会社を選んだ理由

基本方針

転職候補は、割と初期の段階からBtoBのビジネスに絞っていた。ある場所で話したら珍しがられたが、自分は日本の会社はもっと変わらなければならないと思っている。今後もBtoB重視の方針は変わらないだろう。

事業

転職先の事業を一言で表現すれば、製造業を中心とした会社同士のマッチングサービスである。事業実績も確認でき、そこから見る限りではユニークなビジネスに関われると感じた。また最終面接の場では社長から長期的ビジョンが示され、日本の製造業全体の再編までも目指していると伝えられた。今度は「入ってみたら違った」ということがないように祈る。

環境

もっともユニークな取り組みだと思ったのがリモートワークの採用である。全ての従業員は週あたり2回までリモートワークにより出勤しないで仕事を進めてもいい制度がある。これに関しては現職では基本的に認められていないこともあり魅力を感じた。ていうか今の会社リモート可の基準がよく分からないんだよな…子育て中とか親の介護とかだとできるらしいがそれなら俺だって…まあもう辞めるけど…

また、かのMatz氏を呼んでの定期的な勉強会の開催、外部イベントの参加補助など、エンジニア視点の環境が今と比べると比較的整っていると感じた。新天地でしっかり成長しようという気分になる。

この会社に最初に訪問したのは去年の9月と、実はかなり古い。その間、その時面談を担当していた社員の方と イベントで偶然会う ということが3回ほどあった。特に去年9月のRuby Kaigiは全くの偶然で相当驚いた。

実はこれはいい方向に作用した。つまり面接 に担当者と会っておくと、履歴書や面接での質問から読み取るより何倍も詳しく自分の人となりを伝えることができる。ここで面接を設定すれば、もう始まる前から終わっているようなものである。エンジニアにとって勉強会の参加が大事な理由がここにある。転職したい会社があるなら、面接の前にその会社に行くことが近道。

おわりに

正直なところ、現職でも環境はそれなりに良く、人間関係も問題なかっただけに2年足らずで退職という結果になったことは自分でも惜しい。しかし、それらの良かった点をかき消すほど事業とのミスマッチは大きかった。

次の会社はそこまで大きなミスマッチは流石にないはず。まず転職を考えた時点でそこは注意したし、実際の社員とも何度も接する機会があった。6月からまた生活が一変することだろう。会社の大きな目標に自分がどこまで貢献できるか、自分自身はどう変わって行くか、今は楽しみにする。