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職業選択の自由

職業を選択するまでの過程。

転職を決意してから、面接まで

2015年の9月は長めのシルバーウィーク休暇が取れた。日々の喧騒を離れ、九州のリゾート地でのんびりしたあと、遠くに住む親戚とあいさつがてら数日過ごすという、今思い返しても理想的な休暇であった。しかし、そこはかとなく不安になる時間があったのも事実である。家族も恋人も友人もいない一人旅ということもあったんだろうが、少しでも休暇が終わったあとのことが頭をよぎると異様に不安になったものだ。遠く南の島の民宿のベッドに横たわり、深夜「このまま遊んでていいんだろうか」と感じてしまったこともあった。

社会人にとって休暇の過ごし方は永遠の課題である。当時俺は何をやっても日曜の夜には後悔が残る、典型的なサザエさんシンドロームに陥っていた。1日家にいれば無駄にした気になる。外で体を動かせば多少気分は晴れるが、出先でカップルでも見ようもんなら途端に1人で何やってんだと考えてしまう。家族と外出すると気が楽だが、いい歳して独り立ちできていない感がぬぐえない(いつまでも優しくしてくれる家族には感謝している。実際、家族との時間は今でも大事にしている)。これで恋人でも居たら違うんだろうなと考えたこともあるが、想像の域を出ないのでこれ以上はやめておく。とにかく、当時の俺は不満と不安に侵されていた。

「あんた、会社で働くのに向いてない!」と言い放たれたのはそんな折である。こいつらは結局ネズミ講の勧誘員だったのだが、この件で「あ、この会社で働く以外の道もあるんだ」と気付き、そのための行動を起こす踏ん切りがついた。まず行ったのは転職支援サービスへの登録と電話での面談である。そこで言われたことは金言として今でも見に留めている。

転職したいなら、勉強しろ。

(※実際はもっと丁寧な言葉でした)

そう、転職先で求められるスキルを身につけなければ話にならない。この点、入社させてからの将来性を重視する新卒採用とは大きな違いだと感じた。転職で求められるものは「具体的なスキル」だ。つまり、現状では転職したいなど話にならない。ここから数ヶ月を俺は転職準備期間と位置付けた。これをもって、俺の転職活動はスタートした。2015年10月のことである。

ここでDoorkeeperとConnpassを使って勉強会を探すことを勧められたので、さっそく使うことにした。時は10月も半分を過ぎた頃だったが、運良くiOS (Swift) とRuby on Railsをテーマとした勉強会をそれぞれ10月中に見つけることができ、さっそく参加した。改めて思ったのが、技術は触れてみないと分からないという単純な事実である。Swiftは言語仕様を読む限りなかなか快適な言語に思えたが、ことiOSアプリを作るとなると意外にObjective-Cっぽさがある。特に画面表示とプログラム処理を結びつける時の泥臭さは、もはやスマートフォンアプリ開発にいつまでもついてくる課題だろう。俺は見た目の美しさより論理的な美しさが好きなんで、iOSエンジニアへの道は早々に諦めた。

で、論理的な美しさって何よというと、まさしくRubyの設計思想がそれだった。何しろ書いていて快適である。最初は「いちいちendって書くのはPythonよりイケてないな」とか思ったが、PythonPythonでインデントをものすごく注意しなければならないという側面もある。インデントを推奨するが必須ではなく、かつ論理的な区切りをつけやすい「なんでもend」方式に慣れるのにそう時間はかからなかった。少なくとも、予約語に対してブロックの終わりがfiだったりesacだったりodだったりdoneだったりする言語より数倍マシだ。シェルスクリプト、お前だよお前。

勉強会自体も刺激的だった。やはり会社の外の人と会話するのはそれだけで刺激になる。それに自分の話も他の人にウケている様子であった。かくして俺は勉強会にすっかり夢中になり、特に2グループについては常連となった。今でもこの2グループ主催の勉強会にはよほどのことがない限り出席している。この時点では、勉強してスキルを身につけるというより、仕事の鬱憤を雑談で晴らすという目的の方が大きかったのかもしれない。いや、それでいい。消極的だった休日の過ごしかたに、一つの活路が見えた。

勉強会を楽しむ日々がしばらく続いたが、肝心のRubyの技術が身についているかというと、今思えばそうでもなかった気がする。なにしろオリジナルのアプリを結局リリースできていない。Ruby on Rails Tutorialはやりがいがあったが、終わってしまうと急に目標を見失った気がした。やはり俺は教科書の問題があってから行動する習慣から脱していないようだった。この点については今でも最大の課題である。

転機となったのは年が変わって2016年の2月である。先ほど述べた通りTutorialを一通り終わらせ、次何やるかと思い立ったのがCodeIQというサービスである。これは数学的な問題と入力例が提示され、問題に対して正解となるプログラムを投稿することでユーザーの技術力を評価する、広義で競技プログラミングサービスである。ある時の勉強会で3問ほど解いてみたところ、週明けに自分の回答に驚くほど反響があった。まあ、自動投稿的なものもそれなりの割合であったが、自分のプログラミングスキルに自信を持てる一員となったのは事実である。そのうちの1件と連絡を取り、あれよあれよと言う間に面談を経由して面接までこぎつけた。最初の面接は2016年の3月である。ここから本当の戦いが始まった。

サザエさんシンドロームは、いつの間にか消え去っていた。